2007年09月30日 23:52
けれども地獄と極楽との間は、何万里となく隔たれており、
喜び勇んで登っていたとしても容易にたどりつけるものでもありません。
息も荒く糸を手繰り寄せのぼっていたサリナムでしたが、
そこがどれくらい地獄から離れたものかわからないうちに疲れ果てて、
のぼれなくなってしまいました。
風が吹くことはありませんが、空気はいまだに血のような赤い色を帯び、
まだ地獄からそう離れた気にもなれず、サリナムはそっとため息をつきました。
仕方なく糸を自分の右手に何度か手繰り寄せて巻くと、一休みするつもりでぶら下がり、
今までのぼってきた下のほうにずっと目をやりました。
どのくらいの時間をかけたのでしょう。サリナムの頭の中で想像した以上に
彼が居た沼は足元の遥か下のほうで見え隠れしております。
もう息のかかるくらい近くで「あぁ」という他の誰かの言葉ともつかない吐息を聞くことはないのです。
生きているうちに古老から散々聞かされた 地獄の釜も、針の山も
そしていかめしい鬼の姿もついに地獄を訪れてからこれまで
目にすることなく、場を離れることになろうとは。
サリナムは、この分でいけば時間はかかるだろうが、
地獄から抜け出すことは存外わけないような気がしてきました。
サリナムは久しぶりに嬉しくなって、両手で蜘蛛の糸をつかむと
ユラユラと自分の体重をかけて揺らしながら「きゃっひゃっ」と奇妙な声で笑いました。
笑い声を忘れた、或いはヒトの笑い声を未だ意識していない赤ん坊のような声でした。
ユラユラと揺れた蜘蛛の糸は、やけに重みを帯びて足元のほうで大きくたわみました。
ようやく気がついたサリナムが糸の下のほうを見やりますと、
数限りもない罪人が、まるでウンカのように糸にまとわりつき
自分の登ってきたあとを行列になって必至の形相で、上へ上へとよじのぼってくるではありませんか。
サリナムはこれを見るとはじめに驚き、次にその一心不乱な罪人たちの様子が
踏みつければ死んでしまう蟻のように見えて、
踏みつけてやりたい衝動と、(なんと無様な様子よ)と
侮蔑する笑いが喉の奥にこみ上げてきたのです。
くくく・・・と喉を鳴らしながらサリナムはハッとまた違うことに気づき
鬼のような形相をしました。
喜び勇んで登っていたとしても容易にたどりつけるものでもありません。
息も荒く糸を手繰り寄せのぼっていたサリナムでしたが、
そこがどれくらい地獄から離れたものかわからないうちに疲れ果てて、
のぼれなくなってしまいました。
風が吹くことはありませんが、空気はいまだに血のような赤い色を帯び、
まだ地獄からそう離れた気にもなれず、サリナムはそっとため息をつきました。
仕方なく糸を自分の右手に何度か手繰り寄せて巻くと、一休みするつもりでぶら下がり、
今までのぼってきた下のほうにずっと目をやりました。
どのくらいの時間をかけたのでしょう。サリナムの頭の中で想像した以上に
彼が居た沼は足元の遥か下のほうで見え隠れしております。
もう息のかかるくらい近くで「あぁ」という他の誰かの言葉ともつかない吐息を聞くことはないのです。
生きているうちに古老から散々聞かされた 地獄の釜も、針の山も
そしていかめしい鬼の姿もついに地獄を訪れてからこれまで
目にすることなく、場を離れることになろうとは。
サリナムは、この分でいけば時間はかかるだろうが、
地獄から抜け出すことは存外わけないような気がしてきました。
サリナムは久しぶりに嬉しくなって、両手で蜘蛛の糸をつかむと
ユラユラと自分の体重をかけて揺らしながら「きゃっひゃっ」と奇妙な声で笑いました。
笑い声を忘れた、或いはヒトの笑い声を未だ意識していない赤ん坊のような声でした。
ユラユラと揺れた蜘蛛の糸は、やけに重みを帯びて足元のほうで大きくたわみました。
ようやく気がついたサリナムが糸の下のほうを見やりますと、
数限りもない罪人が、まるでウンカのように糸にまとわりつき
自分の登ってきたあとを行列になって必至の形相で、上へ上へとよじのぼってくるではありませんか。
サリナムはこれを見るとはじめに驚き、次にその一心不乱な罪人たちの様子が
踏みつければ死んでしまう蟻のように見えて、
踏みつけてやりたい衝動と、(なんと無様な様子よ)と
侮蔑する笑いが喉の奥にこみ上げてきたのです。
くくく・・・と喉を鳴らしながらサリナムはハッとまた違うことに気づき
鬼のような形相をしました。




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