ことば〜9〜

2007年10月28日 15:53

ふと、おしゃかさまのお顔が風に吹かれて少し揺れたように見えました。

「蜘蛛よ。わたしはすべての欲の海に浸り、
 すべての無常の空の空気を吸いながら生きております。
 わたしの住むこの世界を「極楽」というのならそうなのでしょう。
 けれど極楽というのも、無常の空気に満ちて地獄とつながり、
 欲の海で今ここに登らんとするものたちのもと居た世界とつながっています。」

ぴんと張った糸に蓮の花の露がぱらりと降りかかり、
蜘蛛はそれだけで身じろぎするほどの苦痛を味わいました。
(これ以上誰の言うことも聞けない。)
そう思いながらもおしゃかさまの言葉をじっと聞き入りました。
悟りを得たことでこの千年、おしゃかさまの言葉は極端に短いものでした。
それはまるで絵のような音楽のような・・・
蜘蛛にとってはわかりづらい抽象的なモノのいいようから
今、聞くのは久しく耳にする小さきものにもわかる「言葉」でした。

いつの間にか極楽のすべてのものが聞き耳を立てているかのように
風は止み、花の匂いは運ぶものをなくして
その場にむせ返るほどの香りを立ち上らせるのでございます。


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