繭〜14〜

2008年01月08日 01:35

果ても知らぬ極楽への道のりに、光明はさしつつありました。
同じ糸をたどって這い上がってくる罪人たちを、一度は恐れ、振り払おうと
遮二無二先を急ごうとしたサリナムでしたが、今ではすっかり恐れる心は消えています。
赤く汚れたその髪に、波のように光が寄せては返し照らすのに気づくと
サリナムは腕に力をこめて再び、今度は静かに登り始めました。

(アイツらが息せききって登れば糸は切れる。糸が切れればアイツらは落ちる、オレも落ちる)
オチルオチル、と2〜3度口の中で繰り返してからあとは黙っておりました。
光はますます強さを増し、サリナムはどこからか
今生の時に聞いたことのある半鐘の音が鳴っていることに気づきました。
半鐘はサリナムの耳にノボレノボレ、ともオチルオチルとも聞こえるのでございます。
鳴っている、とだけ気づいた後はさらに考えるのを停止したように
サリナムは全身で銀の糸をたどることに固執しているようでした。
銀の糸はサリナムを包むように輝き、
サリナムはまるで繭に包まれるようにゆっくりと動きを止めるように見えました。

むせ返るような花の匂いがいたします。極楽の風がやんでどれくらい経ったのでしょう。

サリナムがたどり着こうとしている世界はまさに金泥と濃密な花の匂いに包まれ、
その中心には蓮の花が、変わらずたおやかな姿を誰にともなく見せております。


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