2008年01月25日 11:12
青白い星がひとつ、空の穴を覗きました。
この穴は雲に穿たれてあいた穴。
星は夜とともに穴の向こうの世界からやってきました。
まあるい瞳のようだと思っていたその穴は
近寄ってよくみるとぎざぎざアルミの王冠のよう。
黄色い月で蓋をすれば空色サイダーの出来上がりです。
ぴりぴりとまるで空が痛んでいるように
白い泡がはじけて 新しい星たちが穴のこちらに生まれてきます。
「やあいらっしゃい、星のこどもたち」
金平糖のようにかすかに甘いにおいの星たちは
あっという間におさなごの手に握られて
べとべとの、じたじたの、汚れた砂糖になりました。
ぺろりんとちいさな口が舐めとると
青白い星の仲間はおさなごの糧になりました。
ぴりぴりと空は痛んで また星は生まれてきます。
ぼくは穴の向こうに帰りたい。
痛みつづける空がつくる仲間の間をすり抜けてでも
どうにかして もといた夜に帰りたい。
大人が愉しみおさなごの糧になるために
ぼくは生まれてきたのではない。
空が痛むように星も痛み 蓋になれない月も痛み
キラキラとすべては瞬いています。
風はいつかえるのか。
旅人にすがたを変えたおしゃかさまのために
月のうさぎはずいぶん前にその身を火に投げました。
今夜 ふとうさぎは我に返ります。自分の体のあることに。
紅茶で染めたハンカチのように
水鏡に映るのは母さんうさぎ似の薄茶の冬毛です。
鼻をひくひくさせながらうさぎは黒い目で世界を感じています。
月に棲むものとして空に上ったはずなのに
夜風をなつかしく感じるこの体は
いったいどうして今さらうさぎの一生をやり直せというのでしょう。
やさしい気持ちを月に置き忘れたように
うさぎの頬はぷっくりと不満げに膨らんで
久しぶりに感じる土の冷たさに片脚をあげて空を睨みます。
ぶかっこうに開いたその空の穴はなんだい。
なにを埋めても埋まらない、その小さくて深い穴はなんだい。
甘くて苦しいこの世界の空気はなんだい。
自慢のジャンプでうさぎは空に跳ね上がると
ふかふかの毛を口でむしって抜いては
ぎゅうぎゅうと穴に押し込め始めました。
甘い匂いのする穴はうさぎの毛でおおわれます。
うさぎの体がまる裸になる頃、穴はたんぽぽの綿毛のようになりました。
空が痛むように星も痛み 蓋になれない月も痛み
とうとう うさぎはまる裸になって
その身をふたたび大切なものへと投げ出します。
この穴は雲に穿たれてあいた穴。
星は夜とともに穴の向こうの世界からやってきました。
まあるい瞳のようだと思っていたその穴は
近寄ってよくみるとぎざぎざアルミの王冠のよう。
黄色い月で蓋をすれば空色サイダーの出来上がりです。
ぴりぴりとまるで空が痛んでいるように
白い泡がはじけて 新しい星たちが穴のこちらに生まれてきます。
「やあいらっしゃい、星のこどもたち」
金平糖のようにかすかに甘いにおいの星たちは
あっという間におさなごの手に握られて
べとべとの、じたじたの、汚れた砂糖になりました。
ぺろりんとちいさな口が舐めとると
青白い星の仲間はおさなごの糧になりました。
ぴりぴりと空は痛んで また星は生まれてきます。
ぼくは穴の向こうに帰りたい。
痛みつづける空がつくる仲間の間をすり抜けてでも
どうにかして もといた夜に帰りたい。
大人が愉しみおさなごの糧になるために
ぼくは生まれてきたのではない。
空が痛むように星も痛み 蓋になれない月も痛み
キラキラとすべては瞬いています。
風はいつかえるのか。
旅人にすがたを変えたおしゃかさまのために
月のうさぎはずいぶん前にその身を火に投げました。
今夜 ふとうさぎは我に返ります。自分の体のあることに。
紅茶で染めたハンカチのように
水鏡に映るのは母さんうさぎ似の薄茶の冬毛です。
鼻をひくひくさせながらうさぎは黒い目で世界を感じています。
月に棲むものとして空に上ったはずなのに
夜風をなつかしく感じるこの体は
いったいどうして今さらうさぎの一生をやり直せというのでしょう。
やさしい気持ちを月に置き忘れたように
うさぎの頬はぷっくりと不満げに膨らんで
久しぶりに感じる土の冷たさに片脚をあげて空を睨みます。
ぶかっこうに開いたその空の穴はなんだい。
なにを埋めても埋まらない、その小さくて深い穴はなんだい。
甘くて苦しいこの世界の空気はなんだい。
自慢のジャンプでうさぎは空に跳ね上がると
ふかふかの毛を口でむしって抜いては
ぎゅうぎゅうと穴に押し込め始めました。
甘い匂いのする穴はうさぎの毛でおおわれます。
うさぎの体がまる裸になる頃、穴はたんぽぽの綿毛のようになりました。
空が痛むように星も痛み 蓋になれない月も痛み
とうとう うさぎはまる裸になって
その身をふたたび大切なものへと投げ出します。



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